実践有機化学

ミントガム中尉厳選「便利な実験器具6選〜有機合成編〜」

ミントガム中尉
こんな人にオススメ
  • 研究で時短したい人
  • めんどくさい実験操作がある人
  • 快適に研究を進めたい人

有機合成はおもしろい。でも、正直めちゃくちゃ時間がかかる――。

終電バトルに負けてしまい、ラボに泊まっている人が周りにもいるのではないでしょうか?

自由な時間が大切なのは研究も人生も同じです。

実験器具に投資して時短できる環境を手に入れましょう!

早く帰って趣味に費やしたい人も、空いた時間でもう1実験したい人も必見です。

ゴミを実験器具にリサイクルしよう!

身近にある不用品たちもちょっとした工夫で実験器具に早変わり!

工夫しながらオーダーメイドの実験環境を作り上げるアナタは、後輩たちからの憧れを集めること間違いなしです!

ただし、見た目は完全にゴミなので見回りに来たボスに「片付けろ」と言われないようにだけ気をつけましょう。

ボトルガム容器 〜収納マスターの仲間入り〜

デスクワーク中などに集中力を高めるためにガムを噛んでいませんか?

その容器、食べ終わっても捨てないようにしてください!

撹拌子やGCサンプルなどの小物入れに便利です。

実験番号や器具の名前をラベリングすれば、アナタも収納マスターです。

他にもナスフラスコ置きとしても活用できます。

容器に高さがあるので、正規品のフラスコ置きよりも安定感があり、少しぶつけたくらいでは中身が溢れる心配もありません。
(液体が入っているナスフラスコは長時間放置しないようにしましょう。)

ルーズリーフノートの切れ端+ガラス瓶 〜NMRサンプルにも個性を〜

NMR測定は有機化学者の必須業務です。

一度に何本も測定する時に困るのが、サンプルがごちゃごちゃしてしまうこと。

キャップの色で区別したり、フタに油性ペンで印を付けたりも良いですが

オススメなのが、ルーズリーフノートの“穴”を利用すること

穴のそばにサンプル名を書いてNMRチューブを挿せば、サンプル名がわからなくなることはありません。

他にも飲み終わったジュースのビンを洗って脱脂綿を敷き詰めたらNMRサンプル入れにすることも。

NMR室にサンプルを置き忘れても一目で誰のものか判別することができます。

実家に転がっていたモールが、分液ロート洗浄で大活躍…なんてことも。捨てる前に一工夫!

良いリサイクル方法がある人はコメントやXで教えてください。

少しの投資で薔薇色のラボライフを 安価で買える便利器具たち

このセクションでは安価だけど実験環境を大きく変える実験器具たちを紹介します。

年度末の予算消化のタイミングなどを狙っておねだりしてみましょう。

個人的には、ここの器具があるのとないのでは実験効率が飛躍的に変わると思ってます。

フェーズセパレーター 〜分液の最強の味方〜

商品説明はこちら(公式サイトに使い方の動画もあります)

上の画像にあるプラスチック製の筒のようなものがフェーズセパレーターです。

操作は「バイアルや試験管で振り混ぜた有機層と水層を入れるだけ

有機溶媒だけ透過させるフィルターにより、簡単に有機層だけ集めることが可能です。

正直、サンプル数が1つの場合、分液ロートを使う方が早いですが、

この製品は液を入れて放置するだけなので、何サンプルも同時に処理する場合や他の操作を並行している場合などには大きな力を発揮します。

洗って繰り返し使える点、分液ロートよりも洗浄が簡単なのも魅力的!

ジクロロメタンやクロロホルムのような水よりも重たい溶媒しか使えない点が弱点ですが、買っておいて損はないと思います。
(昔は酢酸エチル用も売っていた気がするのですが、発売中止になったのかな?)

正規の使い方ではないですが、シリカゲルを詰めてショートカラム的な使い方をしている人もいました。

ジャストフィッター 〜吸引ろ過用のおともに〜

アズワンの商品ページはこちら

上の画像の黒いゴム栓に金属管の刺さったものがジャストフィッターです。

桐山ロートなどで吸引ろ過する時に大掛かりなガラス器具を組み立てるのはおっくうではないですか?

吸引ビンやスリ付きのジョイントなどを組み立て、ダイヤフラムポンプで引いて

ナスフラスコに入れたサンプルをバイアルに移動させて。。。

非常にめんどくさい!

このジャストフィッターは名前の通り、色々なサイズのナスフラスコやバイアルに「ジャストフィット」します。

操作は単純、「ロートとジャストフィッターと容器を組み合わせる」だけ

高価なスリ付きガラス器具を使用しないで、どこにでも吸引ろ過ができる優れものです。

金属部分が壊れやすかったり、サイズごとにバラ売してくれないのが弱点でしょうか。
(バラ売希望の声が多くなれば対応してくれるようになるかも?)

値段に見合った価値はある 高価な装置たち

ここのセクションでは高価だけど確かな「効果」のある装置たちを紹介します。

本体価格はなかなかのものですが、導入できれば一生モノ。数年に一度の研究室リニューアルタイミングで提案してみてもいいかもしれません。

気軽に導入はできないかもですが、長い時間をかけてアピールしていきましょう

Isolera 〜自動カラムで精製革命を〜

バイオタージ社の商品ページはこちら

有機合成に必ず必要なのが精製作業、再結晶や洗浄で処理できれば簡単なんですが、大半の場合はシリカゲルカラムで処理することになるでしょう。

これがなかなかめんどくさい。

小スケールならまだしも、数十グラムの化合物をカラム精製するとなったら数時間は付きっきりになることも珍しくないですよね。

そんな時に役に立つのが全自動カラムの「Isolera」です。

TLCの結果とサンプル量を入力したら勝手にカラム条件を決めてくれます。

後はサンプルをマウントして放置するだけ。

空いた時間でランチや他の実験をすることも可能です。

特に優れているのが、サンプルのUVスペクトルを測定して、自動でフラクションを切り替えてくれるところ。

人力カラムにありがちな、極性の近い化合物同士が混ざってしまうという悩みからも解放される時が来ました。

自動カラムにはいくつか種類がありますが、個人的にIsoleraが一番使いやすかったです。

LCMS 〜化合物同定の必需品?〜

アジレント社の商品ページはこちら

LCMSは簡単にいうと化合物の分子量を測定する装置です。

この装置はバイオ系分野でよく使われている印象ですが、有機合成でも大活躍します。

GCMSと比べて、測定時間が短い、高沸点化合物も計測可能、サンプルの分解を起こしにくい、感度が非常に高いといったメリットがあります。
(個人的にはLCMS派です。リッチな研究室の場合はGCMSと相補的に使うのが良いかも)

TLCサンプル程度の濃度で検出できるため、ターゲット化合物ができているか、面白い副反応は起きていないかなどを確認する時に大助かりです。

分子量がわかっているのといないのでは同定に必要な時間が全然違うことは説明するまでもないでしょう。

イオン化できる化合物に限られますが、有機物から錯体まで幅広く測定できる優れものです。

同じ大学の仲良しラボが持っているなら使わせてもらってください。
その便利さに感動すること間違いなしです。

おわりに

DIYで生まれたオリジナル器具から、夢のような高額装置まで──
今回は「必須じゃないけど、実験効率が劇的に変わる」アイテムたちを紹介してみました。

どれも、実験という日常にちょっとした“快適さ”や“遊び心”をもたらしてくれる存在です。

みなさんの研究成果が一つでも多く世に出るよう、この記事が少しでもその助けになれば嬉しいです。

他にも「これは使える!」という器具があれば、Xやコメントでぜひ教えてください。

紹介しきれなかったお気に入り器具たちもまだまだ控えています。
いつか第二弾でお会いしましょう。

Let’s Enjoy Organic Chemistry!

ABOUT ME
ミントガム中尉
ミントガム中尉
管理人
工学博士(有機化学専攻)  化学と音楽と映画が好き。あなたの笑顔はもっと好き                                              
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