有機化学って何?〜分子の世界へようこそ〜

- 大学の学部生、高校生、中学生
- 将来の進路を考えているあなた
- 有機化学、聞いたことがあるけどよく分からないキミ
皆さんが「有機化学」という言葉を認識したのは、いつごろでしょうか?
僕の場合はーーーくじ引きで負け、大学の有機化学研究室に配属されたときからでした。
勉強が大嫌いなダメダメ大学生だった僕。
いつのまにやら有機化学に魅せられて、気付けば大学院に進学し、博士号まで持っています。
そして今でも、有機化学に関わるしごとで生活費を稼がせていただいております。
こんなステキなものは全人類へオススメせざるを得ないですよね。
ということで、今回は「有機化学ってなんなのさ?」そして「有機化学の底知れぬ魅力」について説明させてください。
有機化学って何をするの?
有機化学とはズバリ、「分子の建築家」を目指す学問です。
「なんのこっちゃ?」と思ったあなた、これから説明していきます。
そもそも有機化学の主役である「有機物」とはなんだろう?
昨日の晩御飯、今着ている洋服、この記事を読んでいるスマホの画面、そしてーーー気になるあの子。
実は、全部「有機物」が含まれています!
「有機物」とは炭素(C)を含む物質のこと。
医薬品、食品、化粧品やプラスチックまでこの世の全てに関連する唯一無二と言っても過言ではない研究分野
それが「有機化学」です。
つまり「有機化学」とはこのような「有機物」を思い通りにデザインして自由自在に組み立てるぎじゅつなんです。
なんで「分子の建築家」になるための研究かわかりましたか?

有機化学者って何をしているの?ミントガム中尉の研究と1日
有機化学が何かわかったと思うので、次は有機化学者が何をしているのか、
ミントガム中尉が学生時代に有機物をバラバラに壊す研究に没頭していた時の1日をご紹介しましょう。
*ちなみにこれは当時の生活です。会社員の今は残業管理が厳しく、19時ごろには家でゆったりとした生活をしているのでご安心を。
8時 ラボ(研究室)に到着 ステキな1日の始まり
8時半 前日に行った実験の様子を確認 キレイな色だとテンションアップ
9時 前日の実験の処理を始める 8本の試験管を使いこなして大忙し
11時 処理を終えてひと段落 仲間と話したり他の研究室の論文をチェック
11時半 お昼ご飯へ 大学周りの飲食店でエネルギー補給
12時半 食後の休憩 お昼寝タイム
13時 午後の研究スタート 午前中の実験結果を解析しよう
15時 おやつ休憩 ラボの居室で先生と世間話をしたりお菓子を食べたり
15時半 実験に使う化合物を合成 原料合成の効率化が化学者の腕の見せ所
18時 夕ご飯へ またまたエネルギー補給、腹が減っては戦はできぬ
19時 明日の朝に止める実験開始 人は寝てても撹拌子が働けば反応は進む!
20時半 デスクワークタイム 実験ノートをまとめたりお勉強をしたり
23時 帰宅 今日も1日頑張りました
有機化学研究の面白いところ・大変なところ
面白いところ その1.パズルみたいに直感的な研究ができる!
有機化学は分子を扱う研究です。研究で扱うのは構造式と呼ばれる分子の構造を簡単に書いた絵がメインです。(例えば下の絵のようなイメージ)

英語がわからない?数学がわからない?問題ありません。
上の絵を見て青の化合物の右上が取れて緑のパーツがくっついたんだなということが分かれば、あなたも立派な有機化学者のタマゴです!
構造式(上の絵のようなもの)さえ理解できるようになってしまえば、なんでも作れる!世界中の誰とでも意思疎通できる!それが有機化学の面白いところです。
面白いところ その2.五感で変化を感じられる!
理系の実験と聞いて色々な試薬をかき混ぜて色が変わったり、爆発したりをイメージする人も多いのではないでしょうか?
そして学校の実験が地味すぎてがっかりした人もいるのでは。。。
そんなあなたが今頭に思い浮かべている実験ができるのが有機化学の研究です!
試薬がカラフルに変化したり、綺麗な結晶が出てきたり、時には悪臭に包まれて涙したり
「あの実験がやりたかったのに」と嘆いた画面の前のあなた、そんな実験がやり放題なところも有機化学の面白いところです。

面白いところ その3.世界初の発見ができる!
これは有機化学に限らず、研究全般にも言えることですが、研究を続けていたら誰でも一度は世界初の発見ができます。
論文として世界中に発表できるかは頑張り次第ですが、研究室で実験していれば毎日が新発見のオンパレードです。
新発見をした時の快感はまさに「悪魔的」、キンキンに冷えたビールなんかよりもよっぽど癖になってしまいます。
有機化学の大変なところ キツいことも多いです。。。
有機化学は時間がかかる。
何時間もかけて反応させて、何時間もかけて回収した化合物が目的のものじゃありませんでした。
なんてことは日常茶飯事それでもくじけぬ強き心が必要な分野でもあります。
臭いもの、危ないものも多いです。ドラマに出てくるような毒物を使わなくてはいけないヒヤリとする場面も多々あります。
楽しいけれど油断できない、そんな分野でもあります。
有機化学に向いている人、こんな仕事をしたい人にオススメ
有機化学は、人生を変えてしまうほど魅力的な研究分野
じゃあ、どんな人に向いてるのか?どんな未来に役立つのか?まとめてみましょう。
こんな人に向いてます
- パズルや謎解きが好きな人
有機化学は結局は「何を切って何を繋げるか」そんなパズルが好きな人にオススメ - 観察力に自信がある人
ゴミかと思ったらお宝だった!そんな発見が多いのも有機化学の魅力
どんな小さな発見も見逃すな! - 考えるより感じるタイプの人
世界の最先端を進むということは前例がほとんどないということ。机で考えるのも大事だけどとりあえず実験が解決策かも(ミントガム中尉の意見です)
こんな未来で活躍できます
- 創薬研究者:新しい薬を設計する“分子のドクター”
- 化学メーカー、材料開発:スマホやバイオ素材、次世代プラスチックなどの設計者
- 化粧品・食品・香料メーカー:暮らしに密着した分子の魔法使い
- 他にも色々:あなたがなりたいものは何にだってなれる!
“有機化学ってよくわからないけど、ちょっと気になるかも”…その気持ち、立派な第一歩です。
あなたの中の有機化学者のタマゴが、いつか世界を変えるかもしれません。
それでは、いつの日かラボで会いましょう